古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)

古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)



古代への情熱-シュリーマン自伝


以前かえるさんがブログで紹介されていた本です。読んでみました。
偶然にもその生き方が、「理想宮のシュバル」と共通する部分が多く、彼をさらにスケールアップした感じで面白かったです。


トロヤ戦争の物語を絵本で読んだ少年シュリーマン(1822〜90)は、美しい古都が必ず地下に埋もれていると信じその発掘を志す。長年にわたる猛烈な勉学と経済的苦闘を経て、ついに独力でトロヤの遺跡を発見、少年の日の夢を実現する。いかなる環境にあっても自己の目標と希望を見失わず努力しつづけた意志と情熱の生涯が小説以上の面白さで語られる。(文庫本の紹介文より)

「古代史に対して情熱的な興味を持っていた」父の影響と本人の神秘に対する興味から、シュリーマンは8歳のとき父に買ってもらった「子供のための世界歴史」の挿絵にあるトロヤが本当にあったことを確信する。しかもそのとき発掘することまで決意していたというから驚き。父の失業から学業の継続を断念。14歳で小売店の小僧として働き出す。その後、失業、無一文で渡ったアムステルダムで、手形を郵便局に持って往復するという仕事に就く。機械的な頭を使わないない仕事で暇な時間ができる。彼はその時間を言語の習得のために傾注した。

非常に多く音読すること、決して翻訳しないこと、毎日1時間をあてること、常に興味のある対象について作文を書くこと、これを教師の指導によって訂正すること、前日直されたものを暗記して、次の時間に暗誦することである。<中略>わたしはあらゆる瞬間を勉学のために利用した。<中略>できるだけ早く会話をものにするために、日曜日には英国教会の礼拝にいつも二回は通って、説教を拝聴し、その一語一語を低く口まねした。どのような使い走りにも、雨が降ってももちろん、一冊の本を手に持って、それから何かを暗記した。何も読まずに郵便局で待っていたことはなかった。

シュリーマンはそのやり方で、英語、次にフランス語をそれぞれ半年で習得して行く。年譜で数えるとその生涯で10ヶ国語の言語を習得している。
また、転職して収入を上げている。なにより彼には商才があった。

クリミア戦争の間は資本家たちは大きな取引に手を出すことを恐れていたから、私は利益を繰り返し繰り返し運転して、インド藍と塗料と戦時材料(硝石、硫黄、鉛)を大規模に取引して、少なからぬ利益をねらうことができ、一年間に私の資産は二倍以上になった。

36歳で現代および古代ギリシア語を習得。41歳で実業を清算。46歳で自己の資産をつぎ込んでギリシアにて発掘を開始。イタカ、トロヤ、ミケネを発掘した。


シュリーマンはあくまで商売を優先して、ときに言語の習得が数年間中断することもありました。もちろんまず生活を成り立たせることもありましたが、発掘に必要な資金を作ることの為にその商才と労力をつぎ込んでいたんですね。何年かけてでも目標を持って生きて行くことの大切さ、生き方に希望をもらいました。


ギリシア神話を知っていますか (新潮文庫)

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