こころの処方箋 (新潮文庫)

こころの処方箋 (新潮文庫)



こころの処方箋


人が読んでいる本、その人が影響を受けた人の著作などに興味があって、聞き出しては読んだりしてます。そうすることで自分の視界が開けたり、煮詰まった考えに突破口が見つかったりするんですよね。今回は職場の同僚のすすめで河合隼雄の本。


河合隼雄ユング派の心理学者、心理療法家。
まず読んだ印象は「深いけど軽い」です。いい意味で。まあ精神的な問題を扱っているわけですけど、「こういう解決があるし、また他方でこういう結果にもなる、わたしはこう思いますが、後は読者の方で判断してください。」という話の進め方なんですね。わたしは真理の押し売りや、危機感を煽って意識を変えようとするような本は大嫌いなんですが(笑)、それが無いですねこの著者は。ちょうどこの本を薦めた人もそんな人ですけど。


「人の心などわかるはずがない」。そんなのは当たり前のことである。しかし、そんな当然のことを言う必要が、現在にはあるのだ。試しに本屋に行ってみると、人の心がわかるようなことを書いた本がたくさんあるのに驚かされることだろう。私は新しく相談に来られた人に会う前に、「人の心などわかるはずがない」ということを心のなかで呪文のように唱えることにしている。それによって、カウンセラーが他人の心がすぐわかったような気になってしまって、よく犯す失敗から逃れることができるのである。」(著者あとがきより)

これは「常識」を語っている本である、と河合氏は言う。しかし常識がわらなくなっているのが現代人であり、「それを「語る」のは、あんがい難しい」のだそうだ。なるほど、この本を読んでいると、あたりまえなんだけどハッとしたり、気付かされたり、おもわぬ突破口が見つかったりするんだなあ、と納得できます。